効率化の先に仕事のランダム性を殺してないか

 

リモートワークにより"コミュニケーション"が効率化された、という話をよく聞きます。確かに大企業でよくある「デスクが近い上司が無駄に若手を呼びつけては強制的に報告をさせる」みたいなものはリモートワークで減ります。

 

しかし、効率化によってコスト削減とあわせて事業、チームの"種"も殺してしまっているケースがあるように思います。

 

こんなことありませんか?

例えば対面MTGの場合、会議の予定時間5分前に机が隣のAさんに「そろそろ会議ですよー、行きましょう」と声をかける。Aさんは真剣な面持ちで鬼のようなスピードでタイピングしている。そして勢いよくEnterキーをパン!と叩いて、Aさん「よし!行きます!」と顔をあげる。

 

一緒に会議室へ向かう途中「Aさん、忙しそうですね?大丈夫ですか?」と声をかける。

「この前リリースした新機能の問い合わせが多くて、仕様の説明が大変で...」

 

「あー、少し機能が複雑ですよね...。社外向けの説明情報もっと増やした方がいいですかね?」

 

「そうですね...動画の説明情報とかあったら操作方法も分かるし、お客さんも問い合わせなくて済みそうだなあ」

 

「それくらいなら僕の方でさっと作れますよ!ちょっと今度打ち合わせしましょう!」

 

...と、ふとした仕草や様子、会話から新たなアクションが決まることはあります。

 

"決められていない仕事"はランダム性から生まれる

あらかじめ予定された、あるいは指示された仕事はなるべく集中して良い状態で早く終わらせることが望ましいでしょう。一方で、決められていない仕事を生み出すにはランダム性が必要です。先ほどの例で言えば、集中しているAさんの様子や、会議室へ向かう途中の会話など。これはリモートワークでは決して発生しないことです。

 

しかし、えてしてこうしたランダム性は不要だったり、ストレスのもとにもなるものです。先ほどの例が事業、チームの種として機能しましたが、これを口うるさい上司に置き換えるとどうでしょう?...考えたくもありませんね。

 

ランダム性から種が生まれるためには、そもそもチームや事業が「良い状態」であることが必要です。メンバーそれぞれが同じ方向を高い視座で見ているからこそ、偶発的に新たなアイデアが生まれるわけです。

 

効率化の先になにがあるか?

リモートワークに始まる仕事の効率化は現在コスト削減と捉えられています。しかしそれは会社のチームメンバーとのコミュニケーション量も減らしています。ここでいうコミュニケーションとは会話だけでなく、見た目・動き・様子・身だしなみなど様々な情報伝達を意味します。

 

こうしたコミュニケーションの削減によってメリットがあるのは質の悪いコミュニケーションが多い会社です。一方で、日頃からチーム間でのコミュニケーションが活発な会社では、単純に現在の仕事をすべてリモートワークに移すだけでは、ランダム性も排除した、悪しき効率化につながりかねません。

 

高度経済成長期のようにただやるべきことをやれば伸びる!というフェーズでない限り、ランダム性から生まれるイノベーションや事業、チームの種を殺すべきではありません。そしていま多くの会社がリモートワークでその種を静かに殺し始めている最中だと思います。そして1,2年後に会社から芽吹く花が少ないことに気付いた頃には、時すでに遅し、「言われたことだけをただやるだけ」のメンバーばかりの会社になっている、なんてこともあるかもしれません...。